インターネット創作研究
層雲自由律誌とトピックスご紹介

層雲自由律 最新号 紙面ご紹介(一部)  
 
作品抄 編集部薦(p46掲載)

■紛れなく遠ざかる夏 いま影をふみ 近木圭之介
■雨が降るすべてのカナ文字に濁点をつけて 青木久生
■風は、神様からのおやつです 比田井一歩
■草むしりの手より口の方が動く 小玉 石水
■生活にくたびれた、私の長い生命線 植原宮子
■風託した便箋の色 虹の色 いまきいれ尚夫
■強いものに勝てぬ  静かな町が変わりゆく 山上清子
■手を振れば声がしてコスモスに風が生れた 林隆一郎
■野良風のゆくえ 行き倒れという陶酔も 中條恵行
■白い手のぬ くもりほのぼのときめき 新城宏
■草に大の字 こころそっくり空にあずける 久米良一
■物言わぬ 死者よ拉致に棲む重たい闇 中谷みさを
■恵みの雨 開けて見る雨脚、閉めて聞く雨の音 木本千鶴子
■かざりものになったか己が耳 由川うしほ
■笑顔でわたりたい心の交差点 西川ふじ子
■金魚すくい月が破れる 小池能通
■どっこい人生 味噌汁がうまい 野村稲波

ひとこと
自画像作品をたどる

画家が自画像を通して自己を厳しく見つめてきたように、自由律では言葉を通して人間を見つめることを求めてきましたから、自画像に匹敵する自己表現の深い作品は沢山あります。そこで、今回は「自画像」作品と題して、そうした自己表現の見られる句もテーマに入れました。
自画像的自己表現で、多くの句を残した尾崎放哉や山頭火の作品が、大正末期から昭和初期にかけて燦然と輝いたのは申すまでもないことですが、今回は企画の都合もあって、できるだけ今日の作品の中からテーマ作品を多く載せました。

掲載作品の中から皆さんの推薦票の多かった句を、順にあげてみます。

18票 うしろすがたのしぐれてゆくか      種田山頭火   昭和7
15票 肉がやせてくる太い骨である       尾崎放哉    大正15
13票 どうしようもないわたしが歩いてゐる   種田山頭火   昭和5
12票 自画像を少し笑わせておく        近木圭之介   昭和32
11票 おれを見ている自画像の顔を塗っている  芦田鳳車    昭和15
11票 未完の自画像ぽろぽろはがれる      青木久生    平成4
11票 鏡の奥に 笑い疲れた青い道化師     もりたえいいち 平成12
11票 オレだけ生きてる写真出される      小玉石水    平成13
10票 私の内なる丘の上の春露に 蒼き鹿立てり 飯島翠壺洞   昭和56
10票 笑顔では済まされぬときの笑顔である   由川うしほ   平成5
10票 無器用で一つの顔を押し通す       林和好     平成7

山頭火作品が放浪の旅の自画像なら、放哉句は衰える肉体の自画像。山頭火と親交のあった圭之介は「河童」自画像もある詩人派タイプ。鳳車は大自然の中の人間を叙情味豊かに詠んだ人生派。また絵画や音楽に造詣の深いえいいち作品からは、自ずとピカソが漂ってくるから不思議です。なお、この中には大陸出身の映像デレクターの自画像もあれば、白寿で現役という社会派作者の顔も見えますが、お分かりになりましたか。