インターネット創作研究
層雲自由律誌とトピックスご紹介

層雲自由律 最新号 紙面ご紹介(一部)

作品抄 編集部薦(p37掲載)

■ ひとつの言葉もない 影と居る
■ 草に寝て空に描くモンタージュ 未来へと
■ 俺が澄む人が澄む空気が澄む
■ 針穴に風つまらせている にっぽん人
■ どこまでも痩せてゆく月のダイエット中
■ 花のない花木に止まったボロボロの蝶
■ ポケットの中は拳だけ 風の街あるく
■ 賛成議員を戦場におくれ
■ 狂った時計でよい
■ 暗い森に脱ぎ捨てた いちまいの聖書
■ 時代が変わる いつからか失くなった自信
■ 自分から広がる世界
■ 明るい道考へていた 思わぬ道
■ 宵闇の村駆け抜ける米泥棒
■ 案山子 無念無想の引退
■ ぼかし言葉のうまい 金魚の泡
■ 蜘蛛の囲 風の落し子ぐるぐると


近木 圭之介
いまきいれ尚夫
比田井 白雲子
下村 直樹
三好 千峰
中條 恵行
久光 良一
新城 宏
前田 和子
もりたえいいち
植原 宮子
西川 ふじ子
山上 清子
野間 元祐
坂口 喜代子
安田 阿佐子
山下 静波



ひとこと

自由律シリーズ作品「力」の句

内部で評価の高かった句を挙げてみます。

19票 力一ぱいに泣く児と啼く鶏との朝 荻原井泉水 大正 3
12票 此の釘打った人の力の執念を抜く 尾崎 放哉 大正13
9票 牛のまなこにあつめたる力燃ゆるなり 野村朱鱗洞 大正 7
8票 力のかぎり鐘をつく嵐ただ中 青木此君楼 大正 6
14票 闇には人をそそのかす力がある 伊藤 完吾 平成15
10票 毛蟹の力癌に値段がついた 松原 トヨ子 昭和57
10票 帆が力を溜める風がかたちとなる 黒崎 渓水 平成 6
8票 力をもって蟻がひく 近木 圭之介 昭和22
7票 球根に溜めた力 白い花 いまきいれ尚夫 平成 1

(詳しくは、層雲自由律誌69号に掲載)


荻原井泉水の句は朝の静けさを破って響き渡る泣き声、しかも赤児と鶏の声の競合にも似た活力。それを井泉水は「力一ぱい」と新しい言葉で表現されたことに意義があったのです。
いま一つ、この句には重要な井泉水の意図がありました。大正3年3月号の発表時点では、

   力一ぱいに泣く児と
   啼く鶏との朝

と、ニ行詩として初めての「層雲」誌上での試作発表だったのです。
そういえば尾崎放哉、野村朱鱗洞、青木此君楼ら大正期のリーダー格の作品にも、井泉水句同様の「力」の意図が感じられますね。
力を作品のテーマとする句は、その後急速に影を潜めました。力を何らかの人 間の抵抗精神と考えさせる、危険性があると見做された時代が、当時の作者の創 作上に影響を与えたのかも知れません。