インターネット創作研究
層雲自由律誌とトピックスご紹介

層雲自由律 最新号 紙面ご紹介(一部)

作品抄 編集部薦(p2掲載)

■ おぼろに午後 指に小悪魔が居るぞ
■ 芽を出す気配にかすかな風の産声
■ 空の青は青でなく深さである
■ ムンクは何を叫んだ
■ あの星までなら一直線
■ DNAで判定される、人間、ヒト、ひと
■ 心に残る一字 大空に書く
■ つるし柿オレンジ色のスダレ
■ 不安な白が 白を重ねる ユトリロの白
■ 今年こそは会いましょうといつも書いてくる
■ 月へ木霊す 樹凍裂の音
■ 一人のあかりも街の灯
■ 冬空の竿が雲を干していた
■ しらない道ばかりでたのしい
■ 女の狂気は三日月にある
■ 椿にかかる雪 セクシャル ハラスメント
■ 無事企てむほどの数 寒鴉


近木 圭之介
いまきいれ尚夫
黒崎 渓水
新城 宏
比田井 白雲子
藤田 踏青
植原 宮子
西川 ふじ子
もりたえいいち
中根 喜代
渡辺 敏正
前田 和子
伊藤 完吾
田中 千鳩
桟 比呂子
清水 八重子
中川 まさのり



ひとこと

自由律シリーズ作品「老」の句

内部で評価の高かった句を挙げてみます。

匂うてしらふじ老いてうつくしい人と 荻原井泉水 昭和 8
聞こえぬ耳をくっつけて年とってる 尾崎 放哉 大正14
雨だれの音も年とった 種田山頭火 昭和 6
年とれば故郷こいしいつくつくぼうし 種田山頭火 昭和 6
ちぶさだけがおばあさん 海藤 抱壷 昭和 8
老いてこそ、火のいろにある愛情 堀 英之助 昭和24
ばばが飼ってじじがちょっぴりねだる蚕の金 土屋 燕人 昭和45
老は悪にあらず胸はってあるく 松尾あつゆき 昭和52
老獅子の如く吼えたき事いっぱいあり 和田 光利 昭和53
老いた象を主役にサーカス雨の街に来た 浅沼 参三 昭和56
ひまわり堂々と老醜さらしておる 由川うしほ 平成 6
過疎の村は長老の長い弔辞 伊藤 完吾 平成 8
北方領土よ昆布並べ干す老人よ 渡辺 敏正 平成 8
老いてしまった 老いじたくもせず 小林 仁子 平成11
老後の処世 はればれ洗濯 伊藤 完吾 平成13

(詳しくは、層雲自由律誌71号に掲載)


 昨年6月、内閣府が行った全国の成人一万人アンケート調査で、不安や悩みの第1位が「老後の生活設計」第2位が「健康」第3位が「老後の収入と資産」だったといいます。
 そんな世の中を生きぬくために、人間は自分自身を守ろうとする本能から、弱みを見せまいとしたり、反対に気張って見せようともします。若いときはそれが励みになるのでしょうが、高齢者はそれほど積極性もなく、内に籠もってしまいがちです。そうした「老」の本音を探り出して見ようというのが、今回の「老」のテーマ設定でした。
 古い句の中には、老いに親しみを込めた敬老の気持ちを現した句も見当たりました。

    匂うてしらふじ老いてうつくしい人と     荻原井泉水

 山頭火の二句はいずれもおなじみの句で、「年とる」という言葉にこめられた放浪の旅の疲れとわびしさが伝わってきます。