インターネット創作研究
層雲自由律誌とトピックスご紹介

層雲自由律 最新号 紙面ご紹介(一部)

作品抄 編集部薦(p2掲載)

■ 今を生きる それだけに生きる
■ ガラス盆に なみなみと注ぐ ピアノ曲
■ はっと八月の焦げた空を想う
■ 少年が刻む 夏の日の白い残酷
■ そよと桃の花に触れる艶
■ 虫になった男と水になった女、の会話
■ ひばりがすとんとおちたぞこのあたり
■ 丸くはおさまらない意地とおす
■ 椿が流れつく静かな狂院
■ 春間近冬物洗濯億劫至極
■ 波に孤独。石はあおい衣装でぬれている
■ 電線に月ひっかかっていたずらする
■ 遺骨抱いて今日は何の夢をみる
■ 針に糸が通らず風が通りぬける
■ やがて火星となるだろう地球が荒れる
■ ゴボー、クジラ 母が重なる
■ 牛乳、無調整 肌、美調整


近木 圭之介
もりたえいいち
いまきいれ尚夫
いまきいれ尚夫
中條 恵行
藤田 踏青
南沢 延江
田中 むつこ
藤本 経子
高木 千恵
中谷 みさを
植原 宮子
小玉 石水
柴崎 沙希代
伊藤 完吾
大村 久子
清水 八重子



ひとこと

自由律シリーズ作品「唄」の句

内部で評価の高かった句を挙げてみます。

佐渡はおけさで酔えば八日の月のおちる 荻原井泉水 昭和 7
舟から唄ってあがって来る 尾崎 放哉 大正15
春の夜のラヂオの唄は泣いてゑる 種田山頭火 昭和 6
我が教えし唱歌唄いつれて夕暮れはよし 七戸 黙徒 大正10
何と楽しげな地突唄聞いて病めるは 荻原 桂子 大正12
小鳥唄わせ貧しき国の吾は女王 荻原 桂子 大正12
唄えば酔えばまた同じ唄のたのしからずや 秋山秋紅蓼 昭和29
酔うて歌うて花の下子が命果てしあたり 松尾あつゆき 昭和43
森のレクイエム忘却の雪降りしきる 飯島翠壷洞 昭和56
沖の難破船報じラジオ引き続き浄瑠璃 中條 恵行 昭和59
黒く見えるのは咽喉に軍歌がねじれたまま 近木圭之介 昭和60
軍歌が手元に配られて来た夏の日の再会 伊藤 完吾 昭和60
ほっかぶり かぜのうたきいている 南沢 延江 平成 5
鼻歌出てきてへぼ将棋 小玉 石水 平成 6
水には水辺の兄弟がいる小川の唄 伊藤 完吾 平成 8
ピアノの中へ転がって 黄色いサクランボ もりたえいいち 平成11
蛙唄う 戦場は遠くて近い いまきいれ尚夫 平成13
晩鐘 終末のイノチへの賛歌 いまきいれ尚夫 平成13

(詳しくは、層雲自由律誌72号に掲載)


 「歌」はすでに本誌No46号の<文化>特集で、音楽や楽器、歌曲として取り上げたことがありますので、今回は直接、声に出して唄う歌に絞って作品を集めてみました。
 そこで、最も身近な『現代俳句歳時記』(現代俳句協会編)の無季にある「文化」の項目を調べたのですが、やはり「音楽」として例句が二句あるだけでした。
 読者の推薦票では、放哉と山頭火の句が上位にありましたが、句としてはそれほど有名な作ではありません。放哉の句では<三味線が上手な島の夜のとしより>の句が知られており、個人的な体験がありそうな場面を想像させます。山頭火にも前に紹介したことがある、<横顔の美しいジャズ> <お経とどかないジャズの騒音>など、自分は唄わないまでも、唄の好みが放哉とかなり違うことに注目させられます。